匣の中の失楽

通勤用に読んでたんだけど後半ぐらいから面白くなってきて、最後の章に入ったので今日のうちに全部読み切ってしまおう。
中身は探偵小説好きな若者たちのグループの一人が書いている実名小説があって、その中の現実でも実名小説が書かれていて、それぞれの現実が連続殺人の進行と共にもう一方の現実を小説として描いていくという面白い構成。それぞれで違う密室事件の推理合戦をするのだが、ちょっとネタばれになるけど片方解決しないで終わってしまった。そっち側の密室の謎は解けずじまい。というか、それじゃ密室が不可能でも関係ないってことじゃないか。それがちょっと残念だけど、四大奇書に値する出来だとは思う。奇書の中では一番読みやすく楽しめる小説だった。ドグラマグラ黒死館殺人事件なんて古いせいもあってかなり読みにくいからなぁ。


私はどうも虚無への供物がどうして日本三大奇書に含まれているのか納得できていない。匣の中の失楽もそうだったけど、昭和の戦後のミステリーってどうしてああ優等生っぽいしゃべり方の人物ばっかり出てくるんだろう? なんかセリフがわざとらしくて2時間ドラマのサスペンスみたいなんだよね。その辺からして気に入らなくて、しかもアンチミステリーだという以外に面白い構成は無かった。おどろおどろしさと構成の特殊さは欲しいな。その点ドグラマグラの奇書ぶりは圧倒的だ。黒死館殺人事件はペダントリー(マニアックな知識のひけらかし)ばっかりだったので奇書としてはやはり物足りない。


奇書らしさでいえばWikipediaで五大奇書候補に挙げられていた姑獲鳥の夏は十分すぎるほど奇書だった。だって事件の解決が探偵の謎解きじゃなくて古本屋の憑き物落としなのにしっかりミステリーしてるから。それに主人公の……(ネタばれなので書かないけど、ドグラマグラ的なこと。でも前は書いたような気もする)。


そういえば渋谷駅のいつも帰りに通る通路に今度公開されるらしい魍魎の匣(匣って、ミステリーでしかこんな字見ない)の映画のポスターが貼ってあって、そのポスターを見るとなんだか面白そうなんだよなぁ。原作を読む気はあんまりないので映画観に行こうかな。
それにしてもテレビで紹介されない映画の多いこと。都会にいればポスターをどこかで目にできるけど、田舎じゃ全然情報が入らない。しかもなぜか自分からわざわざ探す気にならないんだよな。映画をたくさん観ているほうの私でもネットで面白い映画をやってないか探そうなんて思ったこともない。それより博物館や美術館の催し物のほうがよっぽど気になる。さほど興味がないものであっても。


そのポスターの阿部寛で思い出した。今度日曜洋画劇場TRICK祭りとして劇場版1・2をやるらしくそのCMをやってたんだけど、どうもTRICKの続きをやりそうなことを言っていた。シリーズかスペシャルか劇場版かはまだ分からないけど楽しみ。


この日のタイトルに現実って文字を入れてるけど、あれはLAS VEGASの歌詞の一部で、それを書いた翌日にこの章を書いてたんだけど、まるで予期してたかのように現実って言葉が出てきたことに書き終わってから気付いた。たぶん小説読んでてその辺が意識にあって、それでその歌詞を選んだんだろうな。