言葉

サルトルの『言葉』を読み終えた。
図書館の本は表紙の内側におられた部分が切り落とされているので粗筋も解説もなしに読み始めたもんだから、最初の2ページほどはこれがサルトル自身の話だということに気がつかなかった。このサルトルの自伝は子供時代だけが書かれていて、それを読むだけでも彼が特別な人間だということが分かる。それくらい特殊な考え方をする子供だったようだ。そのことが逆に普通の子供が普通の大人にしかなれないのも当たり前だということにも気づかせられた。
この本を読んで分かるのはとにかくサルトルどれだけ英雄になりたがっていたかということ、そしてその方法として書くことを選んだ、というか、あの家庭環境では書くこと以外はあり得ないか。それにしてもよく子供時代のことをこんなに覚えてるな。父のないこの子は祖父が父の代わり、母は姉みたいな存在でいつも家族が期待するような子供を演じて暮らしてきた。その演じることを意識しているということがサルトルに自分自身を観察させている、いや、自分を観察しているから自分が演じていることを意識しているのか、どちらにせよ子供のころからそんな風に考える人ってそうはいない。それとさっきも書いた英雄志向。それに本に囲まれた生活。これならサルトルサルトルになるのも当然の結果だな。
まぁ私はそんなにサルトルのこと知らないけど、コリン・ウィルソンの言うアウトサイダーをそのまま現実の作家にしたらこんな感じだろうな、と読んでいて思った。というかコリン・ウィルソンサルトルを念頭に書いたりもしているだろうから、順序が逆か。