魍魎の匣

前作の姑獲鳥の夏は観てないけど前作の原作は読んでるので主な登場人物はだいたい分かる。今作も同じ人物が出てくるようだから。
あらすじを大雑把に書くと古本屋と探偵と刑事と作家それぞれが女優の娘と(美?)少女バラバラ殺人と新興宗教の事件に巻き込まれていくというもの。
1952年の日本の描き方がどうとかサイトに書いてあったんだけど、それがどう見ても中国にしか見えない。古い日本語の看板とかを散りばめてはあるんだけど建物や川や橋が中国っぽい、エキストラもやっぱり中国人だし。戦時中のエピソードの時は本当に中国のつもりで観てしまって、いやこれは日本だったっけと思いなおすことが度々あった。
前作同様主人公の過去が事件に関わっているようなので、そのやり方だとシリーズはそのうちネタ切れになりそうな気もしなくもないが、まだ2作目なのでふんだんに事件と関わってるようだ。ところで探偵に超能力あったんだっけ? 記憶にないな。前作ではあまり使わなかったか。


ミステリーとして見るとこれは探偵役の人物が最初から核心部分を握っていて最後まで明かさないという形式なのでちょっとずるいかもと思えなくもないが、サイトにあった紹介を読んで分かる以上の展開はあんまり無い。その紹介から素直に想像した結果が、まさかそんな話じゃないだろうというのをそのまんま映画にしたと思えばだいたい正解。だからミステリーとしてよりは近代的なおどろおどろしさと、事件をどう解決していくかを楽しむ映画かな。まさかクライマックスがマッドサイエンティスト相手のアクションになるとは思わなかったけど。


いろいろと江戸川乱歩っぽい。『芋虫』を思い出した。


ところで最初のほうの女優がどこかのお屋敷の階段で話しているシーンがあって、そこで影が濃いのと薄いのとが微妙にずれて2重になっていたのが気になった。影を二つ作ること自体は別に不思議じゃないけど、このシーンではずれかたが照明ミスじゃないのかと思えるほど微妙で映画でこんな影を見るのは初めてだなと思ってた。
そしたら後になって魍魎というのは影のふちのぼんやりしたものだと説明しだしたので、そこでやっとあれが魍魎だったんだと分かった。


それにしてもこんなに静かに映画が観られるのは初めてだな。エンドロールが始まっても誰も席を立とうとしない。よほどいい映画だったとか、泣いてるとかそういうことでは断じてなく、みんな映画に関する話ばかりしているから映画好きばかりが来ているんだろう。こんな天気の日のこんな時間にこんな変わった映画を観に来ているだけのことはある。